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    2011

08.31

Papa told me.1.


 わたしは鏑木楓、9歳。
 もうお父さんに甘える歳じゃない。そう、思ってる。
 お父さんは私とは別のところに住んでいて、最近お父さんは職場が変わったみたい。だけどそんな連絡があったこと、わたしは知らない。
 でも、お父さんが最近ちょっと変わったかなと思うこともあるの。
 この前も電話でヒーローに会わせてくれる、なんて大うそついてたけど、もしかしたらお父さんは「伝説のレジェンドさん」じゃなくて、別のお父さんだけのヒーローを見つけたのかもしれない。
 何となくだけど、こういうの、女のカンっていうのかな。


「悪ぃっバニーちゃん、ちょっとお願い!」
 両手を合わせて、拝むようにそっと上目遣いをする仕種の「お願い」は、これまでも幾度となく目にしたものだった。
「……まったく、今度は何なんですか?」
「いやぁ、楓がどうしてもバニーちゃんに会いたいって言うから……」
「何で虎徹さんの家族サービスに僕が付き合わなくちゃならないんですか」
 バーナビーの機嫌はよろしくない。いや、はっきり言って不機嫌だ。
「前にお前がほら、その、楓を助けたことがあっただろ? そんで楓がどうしてもバニーちゃんに」
「会ってお礼が言いたい? 僕たちの仕事はシュテルンビルトの街を守ることですよね、あの時はたまたま居合わせたのが彼女だっただけで他意はありません。全員に会っていたら間違いなくヒーローなんてできませんよね」
 理詰めのバーナビーに、虎徹ははぁ、と溜息をついた。
「やっぱり……」
 がっくりと肩を落とす。それを見たバーナビーは、あぁ、でも、と顎に手をやり、宙を見た後、おもむろに営業スマイルで虎徹を見やり、言った。
「僕の「お願い」を聞いてくれるんでしたら、話は別ですよ」
 にこにこ、にっこり。
「え、マジで! 良いの?」
 その笑顔の奥に何があるのかを確認もせず、虎徹は躍り上がって喜んだ。
「本当に……家族思いなんですね」
「いや、約束とかしょっちゅう破っちゃうし、ダメな父親なんだけどさぁ、娘のお願いだったら、なんでも聞いてあげたくなるって言うか。アイツには寂しい思いもさせてるしな……」
 寂しい思いというのは理解できる。バーナビーも子どもの頃ずいぶん味わってきた。ただ、少女には父親と祖母がいて、自分には誰もいなかった。ちょっと八つ当たりしたくなるのは、仕方がないんじゃないか。
「で、どういうプランなんですか?」
「あ、悪り、なんも考えてなかったわ」
 にへら、と笑う虎徹にバーナビーは深い深い溜息をついた。
「大体僕たちの関係をどうやって伝えるんですか。確か娘さんには自分がヒーローであることを隠されていましたよね」
「お、おう。さすがバニーちゃん、よく知ってんじゃねぇか」
「でも9歳の女の子の生態なんて知りませんよ」
 二人の男が腕組みをして顎に手をあて思案顔である。
「とりあえず、身体動かしながら考えるか」
 虎徹は、身体が止まっていたら思考能力も止まると言わんばかりに、ランニングマシンに移動する。話の延長上、仕方なくバーナビーもそれに続いた。
「いい加減なお父さんですね。娘さんに嫌われますよ」
「うっせぇなぁ。お前のほうがオレより歳が近いだろ?」
 ぴし、とバーナビーの眉間に皺が寄る。
「何なんですか、大の大人をつかまえて。おじさんに子ども扱いされる筋合いはありませんよ」
 ついむきになって言い返すが、虎徹はぜんぜん堪えていない。それがますますバーナビーを苛つかせる。
「……お、そうだ、テーマパーク行こう、遊園地」
 ランニングマシンで走りながら、虎徹はぽむと手を打った。我ながら良いアイデア、と自画自賛である。確かに、父親が家族にするサプライズといえば、ありきたりな――それでも喜んでもらえる、賢明な選択だった。
 が、子ども扱いされた上、娘のことしか頭にない虎徹に、バーナビーはとうとうぷつんとキレた。
「それに僕は必要ないですね」
 きっぱりと言い放つ。は? と振り向いた虎徹は足を止めたため、ランニングマシンから見事に振り落とされた。
「うぉ、痛てっ…じゃねぇ、バニーちゃんが一緒に行くから意味あるんだろ?」
 腰を強打したのか、よろよろと手すりにつかまりながら涙目で訴える。
「あ、もしかしてバニーちゃん、遊園地嫌いだった?」
 ちくりと刺さる何気ない一言。どうしてこのおじさんは痛いところばかり突いてくるのだろう。
「僕の遊び場は両親の研究所でしたから」
 さすがにこれには虎徹も気が付いた。バーナビーは幼くして両親をなくしているのだ。
「……悪かった。その、なんだ、憧れのヒーローと一緒に遊べたらなぁと思っただけで……」
 まったく、とバーナビーは何度目かの溜息をついた。
「それは虎徹さんの子どもの頃の心象じゃないですか。……年齢的な話をするなら、僕よりもブルーローズやドラゴンキッドの方がより近いと思いますよ。同じ女の子ですしね」
 バーナビーにしてはソフトランディング。限りなく近くまで歩み寄っている。規則的な走りはやめていない。虎徹は頭をかきながら俯いた。反省はしているらしい。
「……どう紹介するつもりですか。いくら9歳だとは言っても、何でヒーローが父親と知り合いなのかは気になるところでしょうし」
 行き当たりばったりな虎徹が、珍しく溜息をついた。
「大人の事情、で乗り切るしかねぇなぁ…」
「9歳といえばそれなりに色々分かる年齢ですよ。だいたいどうして秘密にしているんですか」
「友恵との約束なんだよ。まぁ、気付かれちまったらどうしようもないんだけどなー」
 バーナビーは、虎徹の薬指のリングにちらりと目をやった。どうしようもなくおせっかい焼きで、いい加減で、何なんだこの人は、と思っていた。けれど、彼なりの理由があるんだろう。もやもやしたイラつきは消えなかったが、黙々と走ることに専念することにした。
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