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    2011

02.05

たくさんの君を知ってるつもりだけど 2

 デュークの人形は優秀だった。常に主が何を望むかを思考し、実行する。ただきれいなだけではなかった。
 久遠も、一体の人形を預かっていた。今は亡き守護者を主としていた人形が、その守護者の死とともに目を覚まし、主を偲ぶためにここ――守護者の住まうイーハ・ヒューイン――にいても良いかと申し出たのだ。ひとまず十二月守の預かりといった形で、残ることになった。この人形、ナキアのスペックは、眠りにつく前から更新されていなかったため、目を覚ますに当たり大幅なバージョンアップが図られた。頭脳であるニューロチップにまで手を加えたのは、デューク。長い間動かしていなかった体躯のメンテナンスを行ったのは、セミラミスである。自らに課したと同じバージョンアップをナキアにも求めた。「守護者ノ一助トナリマスヨウ」とセミラミスは微笑んだ。
 デュークの人型の人形には、主を自ら選ぶ者がいる。ナキアもその内の一体で、守護者を主と選んだのは先にも後にもナキアだけだった。
 主が死んだとき、多くの人形はともに死ぬことを求めた。動力を切り、自ら眠りについたものもある。また、高い能力を乞われ、一時は主の代わりを勤める人形もいた。しかしいずれ寄る辺無い人形は作り手の――デュークの元へ帰ることを願った。デュークも拒否はしなかった。二度、三度と主を買える人形も、数は少ないけれど存在した。「どこに差があるんだろうねぇ」とデュークは笑って言った。
「アタシたちが見えたのかい」
「見えるし、聞こえる。でもそんなに待たなかったよ」
「オ待タセシテ申シ訳アリマセン。いーは・ひゅーいん以外ニ守護者ニトッテ安全ナ場所ナドアリマセンノニ」
「久遠は外にも適応できてるから平気。人の血なんて怖くないよ?」
 にこりと微笑んで久遠は答えた。この子は同じ笑顔を、戦場の中でも浮かべることができるだろうことを、デュークはよく知っていた。
 少女でも少年でもない無性の身体を持つ久遠は、幼いながら確かに十二月守だった。
 どんな表情をして人を殺すのだろう。先代のようににこやかにか、先々代のように荒々しくか。いずれとも違い、いつもと同じように、穏やかにか。
「怖くない、と断言できるたぁ、さすがアタシの見込んだ十二月守だ」
「デュークのことも、セミラミスと一緒に守ってあげる。心配しないで、久遠は狂ったりしないから」
 祖母の事例は、十二月守でさえ狂うということを如実に語っている。最愛の夫を若くして亡くし、彼女は確かに狂ってしまった。
 だから久遠は「狂わない」とはっきり口に出して告げる。
 愛おしいと思うものができたとして、それを亡くしたらやはり狂うのではないか。つい、デュークは興味を持ってしまった。
「だがねぇ、久遠。お前の母親の母親は、そりゃぁ徹底した狂い様だったんだ。アタシぁ直接見たわけじゃないがねぇ、あの猫どもから逐一を聞いてるよ。その狂気に触れて、お前さんの母親も伯母さんも、形は違うとはいえ狂ってるだろう?」
「狂ってないとは言わないけど。でもね、大切なものは全部守るから。おばあさまは、守れなかったから狂った。翠は狂ったおばあさまを生かすために狂った。嵐おばさまは狂ったおばあさまに大事にされすぎて狂った。この環境じゃ、狂ったって仕方無いって思うでしょ、でもね、久遠には空がいる。マリアがいる。あの二人は絶対狂わない。それが――分かるんだよ、久遠には」
 事情は、デュークの知っているものと同じだった。違うのは、マリアを一個の人格として認めていること。デュークにとってマリアは人形と同じだった。セミラミスと同じ、最高の称号を受けるべき人形だった。
「アタシと同じように、人形に依存するのかい?」
「ますたーハ依存ナドシテオリマセンワ」
「人形がいなけりゃ狂人さね、セミラミス。アタシは人形が作れなくなったら死ぬと決めている、狂人なのさ」
 久遠は目を丸くした。
「デュークも狂ってるの?」
 そんなふうには感じない、と言う。
「それじゃぁ久遠、訊くがねぇ、何をしてアタシが狂ってないと証明するんだね?」
「久遠は十二月守だよ。人の心を覗きこむことが、言葉は悪いかもしれないけど、お仕事なんだよ。ちゃんと、狂ってる人とそうじゃない人が見分けられないと、誰を殺して良いのかも分からないでしょ?」
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