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    2010

10.15

遊戯2

「で、さ、セラ。頭数、どれだけ揃えられる?殲滅ってことは取りこぼしちゃダメだから、アタシとマリアだけじゃちょっと人数少ないのよね」
 おとなしく話を聞いていたセミラミスは、にっこりと微笑んで答えた。
「今ゆーふぉりあニ居ルノハ、ワタクシトじぜる、れじーな、めんてなんすデ戻ッテイル天照デスワ。荒事ニ向カナイじぜるヲ此処ニ置イテ行キマショウ」
 結構な数がいる。リイザはにやりと笑った。
「天照が心強いわね」
 初代デュークは要人警護にもなるガード・ドールを多く作っている。中でも蔡主のために作られた天照は、最強を誇る。――最も、その主人である当代蔡主の方が強いとは専らの評判だったが。
 リイザ、マリア、セミラミスとレジーナ、天照。指折り数えて、リイザはこんなものかと呟いた。
 ここには装備は一通り揃っている。看板は上げていないけれど、情報屋スイの末端に位置する。そして情報屋スイは、知られてはならないことだが、よく荒事に首を突っ込む楽園の猫の一員だからだ。
 初代デュークが亡くなった後、セミラミスは主持ちでない人形たちを引き連れて、守護者に庇護を求めた。その選択肢を与えたのは、スイの子供、十一代目の長だった。自然、人形たちは守護者の手足となって働くことになった。セミラミスを筆頭に、エデン各地で情報屋スイの窓口を、人形屋と兼ねてやっている。人と相対するには脆弱すぎる守護者の代わりだった。
 皆を隣の部屋から呼び、マリアが図面を指し示しながら説明をする。
「今日、外から買い付けた人たちを第三埠頭に上げるということだったわ。向こうは全部で23人、こちらは5人。一人が4人とちょっと倒せばゲーム・オーバーよ」
「買い付けられてきた人たちはどうするんだね?」
 絶妙なラインの身体にぴったりフィットしたラバースーツを着込んだレジーナが問う。赤いウェービーロングヘアを無造作に束ねた勇ましい姿だ。
「煩かったら殺しちゃっていいわよ、そんなのどうせ26区じゃ生き残れないわ」
 人工島エデンは特殊な環境だ。外で生きるのとは勝手が違う。戦争がない代わりに、熾烈な生存競争がある。
「リイザさん、それスイには内緒にしてね。みんなもよ、一応スイは守護者だから、やさしくできているの」
「23人を洩らさず殺せば良いのだね。それ以外は生死不問、と」
「向こうもここで商売しようってんだから相応に強いと思ってね、レジーナ」
 120センチ強ほどの小さな身体が豪快に笑い、了承を伝える。
「あら、そういえば、商売相手をどうするのか伯爵に聞いていなかったわ」
 思い出したようにマリアが言った。
「殲滅というからには皆殺しで構わないのでは?」
 物騒なことを当たり前のように天照は答えた。リイザを除けば、一番危険な場所に常に身を置く者の言葉は、尤もだと皆に受け入れられる。
「それじゃ、一人当たりの受け持ち数が変わってくるわ。詳しいデータをもう一度リドルに聞きましょう」
 リドルというのは、伯爵の使いをしている少年型の人形である。躯体はセミラミスの弟にあたるが、動作・感情プログラムを組んだのは伯爵その人だった。伯爵に礼を取らない人は人と思わない徹底的さは、人形は人に従うものであるという前提を大きく覆している。
 もっとも、デュークの作った人形は総じて、人に諾々とは従わない。人を傷付けないこと、というレプリカント・ドールの大前提も、ないに等しい。
 だからリイザはセミラミスに、人形を出せと言ったのだ。


 マリアは、小さな情報屋の事務所にリドルを呼びつけた。とはいえ、楽園の猫の仕事にしては丁寧なものである。簡単に言えば、嫣然とした微笑みで「さっきの件で確認したいことがあるから来て頂戴」ということだった。
 人が見たら羨むようなさらさらの銀の髪、アメジストの瞳の少年型人形は、小さな事務室の中央に置いてあるソファに、うずもれるように座っていた。
「確かにブローカー23人についてはスイと私とで請け負ったわ。でも良く考えてみたら、相手がいるじゃない。人を第三埠頭まで連れてくる連中。殺すのは簡単だけれど、もしそれも依頼するなら色をつけてくれても良いのではなくて?」
 良家のお坊ちゃまと家庭教師といった見てくれだったが、いずれも人ではない。リイザが偉そうに隣のソファに腰掛けて足をローテーブルに乗せている以外には、人の気配はない。
「アタシたち楽園の猫に殲滅を、というなら、殺す以外ないわよ」
 猫も商売だ。いくら相手が26区のトップに立っていようとも、いただくものはきっちりいただく。
 リイザとマリアの二人に凄まれても、リドルは涼しい顔をしてさらりと言った。
「では、相手側4人もターゲットに追加を。身体データはこちらです」
 ホログラムで4名の姿が映し出された。いずれも貧相そうな容姿だったが、リドルは付け加える。
「ヨコスカの研究所で機械化を施されています。身体能力は通常の人の比ではありません。戦争屋並みと言っておきましょう。マスターは取引が終わって相手が帰った直後を狙うようにと情報屋スイに言ったつもりでしたが、もし相手まで潰してくださるのでしたら……」
 無記名の小切手をホログラムの隣に差し出した。
「ユーフォリアでしか使えませんが、これを追加しようとのマスターの言です」
「ちょっと、アンタは高見の見物なわけ?」
 小切手を一瞥し、リイザは足を机の上で組み替えた。
 リドルもこの容姿である。相応の強さがなければいくら後ろ盾に伯爵がいても使いになどならない。
「ラグドールがスイに呼ばれたのであれば僕の力など必要ないはずですが。それに此処にはガード・ドールもいるではないですか?」
「そのガード・ドール並みのアンタが言うと全く嫌味にしか聞こえないわ。アンタ元々事務機でしょ」
「マスターをお守りするのに必要最低限の力を欲しただけですが。必然です」
「もーほんっと仲悪い子たちね。どうせ見届けに来るのでしょう、リドル。わたしたちは売り物も生死問わずで一致しているの、離脱する素振りを見せる奴がいたらあなたの手も借りるかもしれないわ。そしてあなたの護衛に裂くドールはいないの」
 もちろんそちらにしか逃げ道を作らない気満々である。マリアはしっかりとリドルも頭数に入れていた。
「だけど戦争屋とは厄介ね、セラ、弾頭は対外用のを満載しておいてね」
「イツモノわいやーそーハオ使イニナラレマセンノ?」
「戦争屋は装甲が硬いのよ。予備予備。あとみんな大口径の武器使うこと。さくっと終わらせて首を伯爵にプレゼントするわよ」
「ボディに傷がついたら伯爵に直すお金を出してもらいましょうね」
 これが先の小切手の正体である。守護者がバックにいるとはいえ、金を湯水のように使うわけにはいかない。その点伯爵であれば、この26区の富を好きなように使える。
「あーあ、ふわふわグリーン気に入っていたけど今回のことで総替えかもね」
 まぁそろそろ交換の時期だけど、と飽きっぽいリイザは嘯く。

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