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    2010

09.30

落下2

「ボクはそんなに生きたくないな」
 元より、生きられはしない。
「アタシたちは生きるわ。スイも死なせない。だけどフウナちゃん、あなたが生きたくないなんて、意外。もっと足掻くかと思ったのに」
「ボクに繋がるすべての人が死んでも生きたいなんて、思えないよ。ショウが死んだだけでもこんなに悲しいのに、悲しみに押し潰されちゃう」
 亜麻色の長い髪が、そよと風に揺らぐ。
「……思い出したわ、守護者は忘れられない生き物だったわね」
「人が忘れて生きてくのと同じようにね」
 ヘイゼルの瞳が、強くリイザを捉える。これだから守護者は、と、リイザはため息をついた。
「スイが狂ったらアタシかライザが殺してあげるの。そういう約束」
 スイとて守護者だ。たったふたつの言葉が彼女を生かしている。それはリイザも知っていた。フウナも、フウナなりに理解していた。
 父親が死の間際に母親を守れと言ったこと、その母親がすべての守護者を守って欲しいと願ったこと。
 それがスイを生かしているのだと、リイザも理解はしていた。だから逆手にとって、すべての守護者が死に絶えるまで生きろと言い、薬を与えたのだ。
 かつて研究者が望んだ守護者の姿は、完成しつつある。性別を持たず、真っ白な翼を背に持ち、純真でいて力強い。聖書に出てくる天使の姿こそ、研究者たちが望んだ守護者の姿だった。
 十一代目で、ようやくそれは現れた。
 視力と発声器官こそなかったが、強いテレパス能力でそれを補って余り得る。
 かつて研究者だったリイザの育て親は、死んだと思われていた彼女は、エデンの外から帰ってくるなり、養い子であったリイザとライザに向かい、胸を張って言った。「私たちは、ようやく研究の成果を得た」、と。
 ならばその他の守護者は何だったのかと、リイザは癇癪を起こした。
「失敗作なんでしょ、ボクたちって」
「そうママは言ったわ」
「エーダに会ったボクに、スイが教えてくれたんだ。失敗作なボクたちを生かしたのは、エーダだって。あの人こそが、守護者の母親だって」
「アタシは認めない。エーダはあの伯爵の妹よ。たとえ子供のような人であっても、エデンを支える生体コンピュータの根幹な人であっても、そんなお情けで守護者が生き残ったなんて、考えたくもない!」
 大体それは人なのか、とリイザは詰った。守護者と巨大コンピュータを介するエーダは、人の身でありながら、機械になった。
「エーダが言ってたよ。エデンに繋がれたのはお兄さんを繋ぎとめるためだったって。守護者を生かしたのは子供を生めない自分の子供みたいに思ったからだって。ボク、それなら分かる気がする」
「知ってるのよ、同族嫌悪よ、アタシと同じくらいわがままなのよ。全部スイから聞いたわ。でも、こうして会って喋ってるのに、こんなに可愛く思ってるのに、失敗作だなんていくらなんでもあんまりじゃない」
 言い捨てた育て親にも食って掛かったが、三百年以上を生きた彼女にとって、高々四十年程度生きた小娘の話など、ないも同然だった。
 フウナは、ちょっと困ったような表情で、リイザを見つめた。
「長く生きられない身体に脆弱で繊細な神経なんて、十分失敗作だと、ボクも思うけどなぁ」
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